言ってはいけない  残酷すぎる真実

言ってはいけない」と言われると、かえって言いたくなりますね。。。 この本、実はめちゃくちゃ売れています (執筆時にはAmazon社会学概論の売れ筋ランキング1位のときもありました)。 巷にあふれる耳ざわりのよいことより、刺激的な話を聞きたい方にはおすすめです。ただし、身もふたもないことが書かれているので、本書帯に書いてあるように心して読んでください。内容を一つだけご紹介。心拍数と (非行等の) 攻撃的な行動との相関について (P.93-) 。 神経犯罪学者エイドリアン・レインは反社会的学生の安静時心拍数が低いことに気がつき、両者の関連に興味をもちました。次に同氏は、少年期に反社会的な態度をとっていた人間が、成人後に犯罪者になるかならないかを分けた差は何であるかを調査しました。両者を比較してみると、犯罪者にならなかったグループの安静時心拍数がかなり高いことがわかりました。つまり、心拍数の高い子供は更生しやすいということを示唆します (少なくともこのときは) 。この結果は、心拍数の低さは「恐怖心や共感力の欠如・刺激への欲求」を意味しているのではと推察されています。あくまでも仮説段階ですが、心拍数というシンプルな生理現象が性格や嗜好を規定するかもという仮説はとても興味深いです。他の内容も目新しい仮説を社会的実験等で論拠としつつ展開していくので、まさにこのプロセスはまさにサイエンスではと感心しました。
 この本から学ぶべき点。ずばり不都合な事実を許容しようとする分だけ進むべき方向性を早期に修正できる、というところ。努力するにもその方向が大事だという主張がありますが、その見極めにも“体質”を手掛かりにするというのは一つの考え方としては有力かと。思うに上記の低心拍数“体質”も使いようです。橘氏が本書で述べるように、知能や才能に恵まれていれば、ベンチャー企業の立ち上げなどはうってつけです、恐怖心に打ち勝ちやすい体質なのかもしれないのですから。そうなると、キャリアデザインを“体質”をふまえるような時代が来るのでしょうか。「好きこそものの上手なれ」も遺伝や体質で説明できるかもしれません。それはそれで面白そうな面白くないような。