統計学の図鑑 (まなびのずかん)

 タイトルに偽りなし。図鑑なみにイラストが多いです。数式による説明も省かれずにきちんと説明しています。少しでも統計をかじったことのあり、かつ重度の数式アレルギーでなければ、スイスイ読める内容です。個人的には、主成分分析(6章 多変量解析)とはこういう作業をしていたのかとよく理解できました。最近、巷でも話題のベイズ統計論(7章)についても触れられています。8章では、保険料算定法の仕組みについても解説があります。まさに地獄の沙汰も”統計”次第といったところでしょうか。

 本書を読んで一番驚いたのは、P.20の統計人物伝のナイチンゲールの逸話です。私はクリミア戦争に従軍し傷病兵を看護したということしか知りませんでしたが、なんと彼女は統計学にも寄与しているのです。英軍の戦死者や傷病者に関する膨大なデータを分析した結果、彼らの死亡の原因の多くが戦闘時に受けた傷ではなく、その後の治療や病院の衛生状態であることを明らかにしました。ここに少しの解説記事があります。http://www.stat.go.jp/teacher/c2epi3.htm

ポイントは統計データの見せ方にあるようです。円グラフやヒストグラムがなじみのない時代に、グラフでビジュアルに訴える方法を思いつくとはなんとイノベーティブなのでしょうか。このような功績が認められ、ナイチンゲールは19世紀半ばに女性として初めて王立統計協会(the Royal Statistical Society)の会員に選ばれ、その16年後には米国統計学会の名誉会員にもなっています。こういったところにもちゃんと光をあてるのは素晴らしいことだと思います。薬を出さずとも患者を救う最高のexampleだと思います。結論。「白衣の天使」は数学マニアでもあった。私もグラフ化含むデータのビジュアル化の手法には留意したいと思います。