伝わるデザインの基本  よい資料を作るためのレイアウトのルール

   伝わるデザインのルールの土台となる考え方を丁寧に示しています。具体的には、フォントや文字の大きさ、グラフの作り方、空白の取り方、配色等々。初めてこのような本を目にする方はちょっと細かく思えるかもしれません。ただ、その工夫を施すと格段に見やすくなります。本書で紹介されているテクニックを一つご紹介。それは「袋文字 (輪郭線だけがある文字) 」。この概念、私は初めて知りました (P.037)。たしかにこれなら背景の種類に関わらず、読みやすい文字で伝えたい概念を表せそうです。そのようなテクニックの効果をbefore/afterの例を挙げて示しているので、とてもわかりやすいです。ポスターだけでなく、研究計画書を含むさまざまな資料に応用がきく内容になっています。(なお、本書の内容はhttp://tsutawarudesign.web.fc2.com/index.htmlに準拠しています。PC上でご覧になりたい方はこちらからどうぞ。) 

    本書の提案するデザインルールに関して、重要なのはデザインよりもその中身では?という批判もありえます。その指摘に応える文面が書かれていたので、以下抜粋します。「本当の意味で大切なことは、「自身の頭の中が整理・洗練される」ことです。余計な要素を取り除き、必要な要素だけを選別し、内容や論理に即してデザイン・レイアウトすることは、自らのアイデアに正面から向き合い、正確に理解することに他なりません。受け手を思いやり、情報のデザインを真剣に考えることは単なる表面的な工夫ではなく、本質的な成長につながるのです。」 (P.009) また、このようなルールを設定すると個性が失われるのでは?という批判には「マナーを守ったうえで個性を出すことでより個性的で効果的な資料を作ることができるはずです。」どちらの主張にも説得力があります。チームワークや協業を通じて創造性を発揮するシチュエーションを考えると、伝わりやすいデザインのルールの基礎を学ぶことはテクニカルな手助けになると思います (だだし、報告会等のすべての社内資料はここまでする必要はないはずです)。 社外発表や新規提案等の審査員や聴衆の目をひきたいときに、このような視覚的な工夫を施すことは非常に有効です。本書に挙げられたサンプルの視認性のよさがそれを証明しています。