灯台の光はなぜ遠くまで届くのか 時代を変えたフレネルレンズの軌跡

海難事故が多発する18世紀フランス、オタクだったフレネルが開発したのがフレネルレンズ。このおかげで小さな光を効率よく集めることができ、船上の人々に文字通り希望の光を届けます。まさに必要は発明の母であることを知りました。さらに、このレンズのおかげで歴史が動いたとは目からうろこでした。南北戦争、ペリー来航、WWI、WWII。至るところでこのレンズが要所に出てきます。

暗黒の海を照らした唯一の存在。守り神でもあり、象徴としての役割もある。このレンズのおがげで、海上輸送と世界貿易は飛躍的に拡大し、近代化に大きく寄与しました。今でこそレーダー技術の発展で、その役割は退役。誕生から退役に至るまでの一部始終が書かれており、一気に読み上げることができました。数あるブルーバックス本の中でもイチオシの一冊です。歴史や物理が得意でない方にも読めます。ドキュメンタリー調で読みやすいです。

なお、千葉の犬吠埼灯台にはフレネルレンズが陳列されています。関心のある方はぜひ。私も見に行きました。ただ感動。

マンガ 生物学に強くなる

ブルーバックスからのご紹介。学園ドラマテイストの生物学の漫画テキスト。

内容はめちゃくちゃ高度です。教科書で理解しずらい内容が漫画だとするすると理解できます。受験生や専門家だけでなく、一般の方にもおすすめ。この内容が理解できれば立派な専門家です。

漫画の力は偉大です。この手の理系科目テキストできれば、理系科目リテラシーが飛躍的に向上する気がします、マジで。

シリーズ人体 遺伝子 健康長寿、容姿、才能まで秘密を解明!

NHKスペシャルの本には良書が多い。これはまさにそれ。最新の話題提供と素人にもわかりやすい解説。内容も読みごたえがあるが、私が最も感動したのはその文章体。翻訳語修飾であるエピジェネティクスを「DNAスイッチ」と例えるレトリックには脱帽。このスキルは見習いたい。一般国民もサイエンスにはかなりの関心があるのだが、彼らへの共有はこのようなレトリックのスキルにの有無にかかっている気がする。 この本なら、NHKに対して舌鋒鋭いN国党の立花氏も認めてくれるのでは。。

相分離生物学

今日はライフサイエンス系研究者必読の一冊をご紹介。ここ数年、Nature, Cell, Science誌をにぎわせている相分離のバイオロジーの教科書です。この本では,細胞内の液液分離の成果を整理し,これまでの概念を塗り替える「相分離生物学」という新しい分野を紹介されています。現在、私たちは生物の教科書に書かれている記述が書き換わる瞬間にたっています。その根拠の一つがこの相分離。細胞内には、液液分離で形成された液滴(ドロプレット)があり,それが転写や翻訳やシグナル伝達の制御,環境ストレスへの応答やアミロイドの形成など,さまざまな生命現象と密接に関わっていることが報告が相次いでいます。業界関係者は必読です。

読むだけイスラム史 ― 受験生の盲点をタテ読みで一気に

イスラム史、皆さんはどのくらい知っていますか?

ぶっちゃけ、大して知らないですよね。シーア派スンニ派などのワードくらいは知っていると思いますが。少し前なら、アラブの春、9.11、湾岸戦争サダム・フセイン、というワードもよく目にした時代もありました。ただ、イスラムワールドはごちゃごちゃしていてよくわからないのはよくわかります。世界史教科書も基本的にはキリスト教中心の視点でまとめられているので、イスラムの何たるかがよくわからないのはしょうがない面もあります。ただ、大学入試ではよく出題されますし、これからのグローバル社会を生き抜くうえで最低限のイスラム知識は必要でしょう。

この本を読めば、イスラムのエッセンスが理解できます。ポイントポイントで地図もありとても読みやすいですよ。1ページあたりの文字量もいい感じに収まっています。あと、ポケットサイズなのもうれしいです。ポケットに本当に入りますから。

 

 

超二流 天才に勝つ一芸の究め方

今日はこの一冊。今回は引用ベースの紹介です。

この世に生を受けた時点で、全ての人は何かしらの可能性を持っている。一流は無理でも“超二流” にはなれる。

誰しも一流になって活躍したいと言う願望を持っている。しかし、現実にその才能に恵まれている人はほんの一握りでしかない。しかし、自分の「強み」は何かを知り、それを生かすためには思い切ってオールラウンドな活躍への希望を捨てることで活路を見出すことができる。これが超二流の定義です。

 読者の中には、自分がコミュニケーション下手であると悩んでいる方もいるかと思う。私は一般的に言われているコミュニケーション能力が、一流になるために絶対に必要な要素だとは思っていない。

 よくぞ言ってくれました、と思います、マジで。

数学で学ぶ化学工学11話

   とても実用的な本です。システム工学をやりたいと思う私にとって、この本はかなり勉強になりました。本の表紙の文言をご紹介します。

    材料、装置、そしてプロセスの設計は文章では行えません。数学が強力な武器となります。本書では、化学工学を学ぶ上で真に必要不可欠な数学を紹介します。

    対立する概念のわかりやすい説明から本書はスタートしています。ところで皆さんは下記の対立語のペアをすっきり説明できますか?

 平衡論(equilibrium)vs 速度論(non-equilibrium)  
 定常(steady)vs 非定常(unsteady)  
 観察される(observed)反応速度 vs 真の(intrinsic)反応速度 
 決定論(deterministic)vs 統計論(stochastic) 
 モデル(model)vs 現実(real) 

    なかなか難しいですよね。本書に書いてありますから気になる方は読んでみてください。一番最後の「モデル」について。「モデル」という概念はこの「現実」との二項対立でとらえるとすっきり解釈できます。つまり、「モデル」というのは理想化された状態を具現化したものということです。職業のモデルさんも同じですよね。ある種の理想化された状態というか。例えば、売りたい商品をもっとも理想的に具現化できる人というわけです。理系学問でも一緒です。数式モデル、立体構造モデル、モデル系などなど。ただ、これらの場合は現実の現象をなんとか記述しよう、表現しよう、というニュアンスが含まれますがね。

    さらに、理解を助けるかわいらしいイラストもgoodです。座標系の説明の際、直角座標はサイコロステーキ、円柱座標はソーセージ、球座標はミートボール。なんてわかりやすい、イメージを想起させる説明なんだと感動しました。