「読まなくてもいい本」の読書案内  ―知の最前線を5日間で探検する

  「はじめに」だけでも読む価値があります。著者は「読む本を決める」前に「読まない本を決めよ」と主張しています。昨今、巷でも「本を読め」と言われることが目立つようになりました。そのことと本の発行数の急激な増大との関連に関する指摘はとても新鮮でした。この「はじめに」を読めば、「まだこんなに読んでない本・論文がある!!」 → 「なんで自分はダメなんだ」というようなネガティブ・スパイラルに陥らずにすみます。目次に挙げた項目は文系項目的な要素が強い分野で、よく知らない分野だなと感じる方も少なくないと思います。ですが、本文では具体例を交えた説明がなされていますし (霊長類の習性やハチの血縁度で最新の進化論を説明しています)、文体も肩の凝らない読みやすいものです。「あとがき」では、本書の内容と関連して国内の人文社会科学系の学問のあり方についても一石を投じています。ちょっと辛口の提言ですが的を得ているように感じました。

 この本を読んだ創造性発揮のポイント。それは、ずばり著者が一貫して強調している「古いパラダイムとの決別」です。創造性もパラダイムの延長線上にあるとすれば、パラダイムの把握は必要不可欠です。ところが、人生は有限性をすべからく皆有限。限られた時間の中で収集すべき情報は新しいパラダイムで書かれている情報でしょう。本文をそのまま引用すれば「古いパラダイムで書かれた本をがんばって読んでも費用対効果に見合わない」のです。